11月7日の衆議院予算委員会で高市早苗首相が「台湾有事」に対して「存立危機事態」になりうると答弁したことで、日本と中国の関係がいきなり緊迫化してきましたが、習主席は人民解放軍創建100周年となる2027年までに「台湾統一」という長年の目標を具体化しつつあるとの見解もあります。その際に、日本の自衛隊が米軍と共同して軍事行動に及んだ場合は、日本各地に米軍基地の存在する日本の領土も戦火の被害を受けることを覚悟しておかねばなりませんね。
〇「習近平、ウクライナ停戦を注視」…台湾統一に向け“28項目計画”を密かに策定か。中国、ウクライナの停戦案を注視…台湾版28項目計画を出す可能性も。今後数カ月が台湾安全保障の分岐点。
〇ドナルド・トランプ米政権とロシアによるウクライナ停戦案が、中国の台湾統一計画にも影響を及ぼす可能性が指摘されている。米ブルームバーグ通信のカリシュマ・バスワニ・アジア政治コラムニストは1日(現地時間)、米国とロシアがウクライナの停戦を進める中、習近平中国国家主席が台湾統一という長年の目標を具体化しつつあるとの見方を示した。バスワニ氏は「中国は、ウクライナに対するトランプ政権とロシアの未完成の和平案から教訓を得ている」とし「米国が合意のためにどこまで踏み込むのか、ロシアにどれほど譲歩するのかを注視している」と指摘した。さらに「米国の姿勢が曖昧になり、習主席の意図が露骨になるほど、台湾の状況は危険度を増す」と述べ「今後数カ月が台湾の安全保障にとって決定的になり得る」と強調した。米国とロシアは、28項目からなるウクライナ停戦案を押し進めている。内容は、ウクライナが安全保障の提供を受ける代わりに、東部ドンバス地域の完全放棄と北大西洋条約機構(NATO)加盟の断念を受け入れるというものが柱とされる。
中国は「一つの中国」原則に基づき、台湾を不可分の領土の一部と位置付けている。習主席は人民解放軍創建100周年となる2027年までに、必要な場合には台湾を武力で占領できる体制を整えるよう指示している。オーストラリア陸軍の退役将官であるミック・ライアン氏(ローウィー研究所 国際安全保障プログラム上級研究員)は、中国が米国とロシアのウクライナ停戦案にならい、台湾に対する独自の計画を準備する可能性があるとの見方を示した。ライアン氏は「習主席は軍事力を行使せずに台湾を掌握することを望んでいる」とし「中国共産党がトランプ政権に対し、台湾に関する28項目の計画を秘密裏に、または公に提示する可能性もある」と述べた。トランプ大統領は10月末、習主席との首脳会談で米中貿易戦争に終止符を打ち、対中関係の改善を加速させる構えを見せている。これと同時に、習主席は台湾統一に関する発言を以前よりもはるかに大胆に展開している。中国は高市早苗総理による「台湾有事への関与」発言を受け、日本への制裁を強化し始めた。日本はアジア地域における米国最大の同盟国であり、中国がトランプ政権の地域関与の意思を試そうとしているとの分析が出ている。

〇日本はどのように中国と向き合うべきだろうか。米国社会が内向きになり、トランプ政権が自由主義の盟主であることを放棄したことにより、国際情勢の流動化はすでに不可避である。中国の政治的不透明性は持続し、民間企業や外国企業を重用する方針がいつまで維持されるのかも分からない。一方、中国がより高技術の「製造強国」へと向かうならば、特定の分野において日中の経済的な結びつきが強まることも想定する必要がある。そうした状況下で考慮すべき重大なリスクの一つに、台湾をめぐる武力行使の可能性が挙げられる。ただし、その時間軸を論じるにあたって多くの場合、中国専門家と安全保障専門家の見解は異なる。安全保障関係者からは習指導部が4期目に入る見込みの2027年に軍事行動を起こすという「2027年台湾有事説」が提起され続けて来た。2021年3月にデービッドソン前米インド太平洋軍司令官が米議会軍事委員会の公聴会で発言したことを皮切りに、2023年2月には米中央情報局(CIA)のバーンズ長官も「(習近平が)2027年までに台湾侵攻を成功させるための準備を人民解放軍に指示したことをインテリジェンスとして把握している」と述べた。2025年3月には、台湾国防部(国防省)が中国による侵略の可能性がある年を2027年と初めて特定したことが報じられた。いずれも軍事的な合理性に基づく見解である。確かに論理的には、軍事的能力の高まりと軍事力行使のインセンティブは相関関係にある。近年の南シナ海や台湾海峡をめぐる軍事的緊張の高まりはその証左であり、昨今の尖閣諸島周辺海域での中国の活動強化も連動していると考えられる。他方で中国研究の立場からは、コストがかかり過ぎる武力行使は現実的ではないという見解が多勢を占める。筆者自身もあと2年あまりのうちに東アジアで軍事衝突が生じる可能性は非常に低いと認識している。少なくとも当面は、①国内経済の回復が優先される、②武力を用いた場合には併合後の統治が困難になる(統治コスト)、③失敗した場合には一党独裁体制が揺らぐ(正統性の毀損)、等の考慮から武力行使は合理的な選択肢になりにくい。ただし軍事関係者がしばしば引き合いに出すのは、ロシアのウクライナ侵攻も直前まで合理的選択ではないと見なされてきたではないか、という経験則である。この認識を中国にそのまま当てはめることには留保が付くが、一抹の可能性を軽視すべきではないだろう。安定した日中関係を維持するためには、包括的な観点から中国に関わる利益とリスクを再検討することが必要となる。日本は中国と技術開発等における協力を深めることで経済・社会的利益が期待できる一方で、中長期的にはさらに「強い」中国と対面する、すなわち対中リスクを自ら高めるという皮肉な結果に陥る可能性がある。経済と安全保障が複雑に絡み合うチャイナリスクに対処するために、経済安全保障のビジョンを官民で共有し、日本としての戦略的アプローチを検討することが喫緊の課題となる。