1月3日の日経新聞の記事に興味深い記事が載っていたのでで抜粋しておくことにした。
温暖化、戦争に劣らぬ脅威 気候変動が迫る国際協調・・・2022年1月3日 世界の平和を脅かすものは何かと聞かれれば、多くの人が核兵器の拡散や大国間の対立などを挙げるだろう。ところが、それらにも劣らぬ危険が差し迫っている。気候変動だ。人類は大戦争を避けられたとしても、温暖化がもたらす異常気象により、平和を失いかねない。米国や欧州の軍内部では、そうした切迫感が強まっている。2021年6月、米欧の軍事専門家が集まり、「気候と安全保障に関する世界報告書2021」をまとめた。この中で、気候変動によって世界のあちこちで混乱が起き、30~40年代には「壊滅的」なレベルに達しかねないと分析した。予想されるのは次のような事態だ。

〇異常気象によって洪水や干ばつといった災害が多発する。各地で難民や移民があふれ、国境の緊張が高まる。食糧や水資源の奪い合いが激しくなり、テロや紛争の危険も高まる……。これを防ぐには気温の上昇を止めるしかないが、見通しは暗い。温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」では、今世紀末までの世界の気温上昇を、産業革命前に比べ1.5度以下に抑えるのが目標だ。だが、各国が対策を上積みしなければ、2度を超えてしまうという試算がある。すでに気温の上昇は世界の安全保障を傷つけている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、
異常気象によって10~19年、年平均2150万人が住む場所を追われた。紛争に伴う難民や移住者の2倍以上だ。環境団体「気候行動ネットワーク南アジア」などによると、干ばつや土地の水没で、50年までに南アジアの3400万~6300万人が移住を強いられかねない。同年までにメコン川の水量が16~24%減り、約6000万人に影響が及ぶとの分析もある。脅威に直面しているのは途上国だけではない。米シンクタンクによると、米国は17~19年、44件の異常気象に襲われ、合計4600億ドル(約50兆円)の被害をうけた。これらすべてが気温上昇のせいだというわけではないにしても、大きな影響を及ぼしていることは数々の専門家が指摘するところだ。しかも異常気象は災害を増やすだけでなく、国家間の対立を強め、紛争やテロを広げる毒素にもなる。
典型ともいえるのが、北極圏だ。氷が解け、航路や軍事拠点にも使えるようになり、大国の争いが熱を帯びている。北極圏を縄張りとみなすロシアは米欧や中国による関与を警戒し、21年1月、北極圏の防衛を担う軍管区を設けたほか、軍事演習も増やしている。米情報機関には中国軍が北極圏での活動を広げ、ロシア軍とのあつれきが強まるという分析もある。温暖化は米中対立の行方にも少なからぬ影響を及ぼす。両国の緊張を和らげるよりも、強める方向に働くだろう。実際、米国家情報長官室は21年10月21日の報告書で、気候変動に乗じ、中国が各地で影響力を広げかねないとの警戒感を示した。具体的には、(1)海面上昇に脅かされる南太平洋などの島しょ国に援助を注ぎ、政治的に取り込む(2)太陽光パネルや風力発電のタービンの生産に欠かせないレアアースの埋蔵国に、接近を急ぐ――といった例を挙げている。本来であれば、気候変動という「人類共通の敵」を前に、各国はさまざまな対立を乗り越え、結束して脅威に対応するのが望ましい。しかし残念ながら、このままでは世界は逆の方向に進みかねない雲行きだ。では、どうすればよいのか。まずは米欧日が情報や分析を共有し、気候変動がもたらす危機への連携策を深めることが先決だ。とりわけ優先度が高いのは、世界各地で大きな災害が頻発したときにすばやく協力し、対処できる体制を整えることである。米軍は今後、あらゆる図上演習に、気候変動リスクを織り込むという。北大西洋条約機構(NATO)も21年6月、同リスクへの対応策をまとめた。日本でも防衛省が同年5月、「気候変動タスクフォース」を設け、対策を練り始めている。こうした個々の動きを束ね、米欧日が共同で取り組まなければ、気候変動という天敵にはかなわない。そのうえで、外交や安全保障で対立する中国やロシアにも呼びかけ、この問題では協力できる足場を築くべきだ。このまま手をこまぬいていたら、全員が敗者になってしまう。長年、外交・安全保障を取材してきた。東京を拠点とし、北京とワシントンの駐在経験も。北京では鄧小平氏死去、ワシントンではイラク戦争などに遭遇した。著書に「暗流 米中日外交三国志」「乱流 米中日安全保障三国志」。